ネガティブ・ケイバリティとウェルビーイングー不安定な状況に居続ける力ー

2021年08月03日

VUCAの事態と言われる不確実なこの時代。今日お伝えしたい言葉は「ネガティブ・ケイパビリティ」です。ネガティブ・ケイパビリティとは,「簡単に答えが出ない,どうにも対処しようのない事態に耐える能力」,あるいは「不確実,不安定で未解決の状態に居続ける能力」のこと。その大切さとウェルビーイングの関係についてお話しします。

答えが出ないのはつらいこと

試験の合否発表を待っている間,プロポーズの返事を待っている間,そして,がんの病理検査を受けて確定診断結果を待っている間。

人生にはさまざまな待ち時間があります。

そして,結果への期待が大きいほど,待つ心には不安が生じ,早く結果を教えてほしい!でも結果を知るのはこわい!という両方の気持ちで揺れ動きます。

また,ガンなどの死期を言い渡された人が過ごす終末期と言われる時間。ご本人はもちろん,周りの家族や医療介護支援者も,この時間にどう向き合っていくのか,大きな課題であり,実際に戸惑い苦しむことも多いものです。

このように,人間は,自分ではどうしようもない状況,答えが出ない状況にとても弱い生き物です。

しかし,先が見通せず,どんな対処をすればよいのかが明らかでない状況においても,ウェルビーイングは存在します。そのカギを握るのが,まさにネガティブ・ケイパビリティの強さなのです

ネガティブ・ケイパビリティが低いとき・高いとき

ネガティブ・ケイパビリティとは,「簡単に答えが出ない,どうにも対処しようのない事態に耐える能力」,あるいは「不確実,不安定で未解決の状態に居続ける能力」のことです。

ネガティブ・ケイパビリティが低いと,不安定な状態に耐えられず,

・不安定になり抑うつ気味になる

・イライラをまき散らしたす

・他人への攻撃などの行動に出る

・他者との交流を断とうとする

などの状態になります。


また,答えがすぐに出ない状態を回避しようとして

簡単な解決方法に飛びつく

・物事への取り組みを途中で投げ出す

などの行動に出ることもあります。いずれもウェルビーイングとはいえない状況です。


ネガティブ・ケイパビリティが高い人は,不安定な状況が続いても,

・過度に不安にならず

・安定した心理状態を保つこと

ができます。

また,答えがなかなか出ないという待ち時間にも,

・その状況を受け容れ

・自分なりにできることに取り組んだり

・目の前の小さな幸せに感謝

することもできます。この状況が,まさに自分自身と周りのウェルビーイングな状態を作り出すもの。ネガティブ・ケイパビリティはウェルビーイングと密接に結びついているのです。

シェークスピアもネガティブ・ケイパビリティが高かった

ネガティブ・ケイパビリティという言葉の生みの親は,イギリスの詩人ジョン・キーツだと言われています。キーツによると,文豪シェークスピアが偉大な創作を成し遂げたのは,まさにこのネガティブ・ケイパビリティが高かったからだといいます。

作品を作り続けるプロセスは決して楽なものではなく,先の見えない不確実な状況に身を置き続けるということでもあります。まさに,産みの苦しみが長い間続くものでしょう。

シェークスピアは世界中の人に読まれる膨大な戯曲作品を残しており,いわば,当時の社会におけるスーパークリエイターです。

その作品たちからは,人間の実存的な葛藤,人間と社会との矛盾,人間心理の不可解さなどに果敢に挑んだ,壮大な思索の過程がうかがえます。

これほどまでに作品と向き合い,模索を続ける大変さを味わうくらいなら,もっと楽な仕事を選んだり,練り上げることなく作品を適当に作ってしまうことも可能だったでしょう。

キーツは,その過酷な状況に自分自身を置き続け,投げ出すことなく創作に向き合ったからこそ,シェークスピアは後世に残るあれだけの偉大な作品を残すことができたと推察しているのです。

(ジョン・キーツ自身も素晴らしい作家です,念のため。

なお,余談ついでにイギリス巨匠詩人のひとりバイロンについて,その悲嘆的な作風を当カレッジの名称に冠しているバートランド・ラッセルが痛烈に批判しているのが興味深いところですが,その話はウェルビーイングとからめてまたいつか)。

自分にも他者にも優しくあろう

このあいまいで不確実な時代で,これからの社会がどうなっていくのかわからないという不安を抱える方も多いでしょう。

また,寿命が延びて選択肢も増えたということは,逆にいえば人生の決まったレールが失われ,想定外の連続の人生になったということでもあります。

たびたび起きる自然災害や,この度の新型コロナウイルス流行も,社会不安を大きくしています。

その中で,体調を崩したり,優しい心を失ったりすることもあります。とても残念なことに,他人を傷つけるようなSNSが飛び交うときもあります。ウェルビーイングな状態とは遠ざかっているという人もいるのではないでしょうか。

こんなときこそ,ウェルビーイングをつなぐためにネガティブ・ケイパビリティという言葉を思い出してください。

不確実な状況を受け容れ,その中に居続けることは,大きな能力なのです。

そして,どんな時も

・物事や相手をジャッジせず

・自分らしさを認め

・目の前のことに小さな幸せを見つけ

・そのことにただ感謝すること

・自分なりにできることに取り組む姿勢

・自分の不安や怒りに巻き込まれず

・目の前にいる人や生きものたちにただ優しくする態度

が,必ず自分自身のウェルビーイング,大切な人のウェルビーイング,そして,

この不確実な時代を生きるわたしたちのウェルビーイングを支えつないでくれるはずです。



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